NAIST 情報科学研究科 博士前期課程の第 1 回選抜試験を受験してきました。

スペックはこんな感じ。

  • 高専の情報系学科を卒業
  • 地方国立大の情報系学科へ編入
  • 受験勉強前の TOEIC スコアは 490 😇

今後受験する人たちの参考になればと思います。

出願まで

NAIST の出願に際しては小論文を提出する必要がある。テーマは「NAIST において取り組みたい研究」。もちろん B4 でやりたいテーマがハッキリしている人は少ないと思うし、ほとんどの人は今の大学での卒業研究で精一杯だと思う。

私の場合は高専から大学に編入しているのであまり参考にならないかもしれないが、学部でやろうと思っている卒業研究の内容に夢を織り交ぜて小論文を仕上げた。構成は、以下のとおり。

  • 「〇〇の研究がしたい」
  • 研究分野に関する前提知識の説明
  • 提案手法と実現方法、評価方法
  • その研究を取り組むのに NAIST を選んだ理由

書いた小論文は大学の指導教員の先生に添削してもらい、出願書類と一緒に提出しました。念入りに準備したい場合は、オープンキャンパス等で受験先の研究室の先生にアポを取って研究内容の相談をする、さらに研究室の学生に小論文の添削を依頼するといいと思います。私は第一志望ではなかったので、念入りな準備はできませんでした。

追記: 合格していたので小論文を公開します.少しでも参考になればと思います.分野の重要な論文を把握しているか,分野の中で自身の研究がどう位置付けられるか,などについて意識して記述すると,面接で説明しやすいと思います.

stonewhitener/naist-essay: Essay for the entrance examination of NAIST

入試当日まで

NAIST の入試は、

  • TOEIC L&R スコアシート
  • 数学の口頭試問
  • 小論文に関するプレゼンテーション
  • 情報科学に関する基礎的な口頭試問

によって合否が決まります。

TOEIC

受験生の TOEIC の平均スコアは 630 程度と言われているので、650 程度あると安心です。NAIST の受験を考えている場合は、いいスコアが提出できるよう、早めに TOEIC を受験しておきましょう。

私の場合、受験勉強を始める前のスコアが 490 (2016 年 1 月) で危機的状況だったので、TOEIC の 公式問題集 で勉強して何度か受験し、最終的には 650 (2016 年 4 月) で NAIST に提出しました。

個人的な見解ですが、TOEIC は各回によって難易度が異なります。スコアを取りやすい回もあれば、逆にスコアを取りづらい回もあるのです。また、場数を踏めば、効率的な解き方がわかってきて高いスコアが狙えるようになります。公式問題集を本番と同じように解いて自分に合った解き方を見つけ、可能な限り何度も受験することをおすすめします。

数学

数学の口頭試問では、高校数学から大学数学の内容が出題されます。10 分で解いて、12 分で試験官に説明する形式ですので、あまり複雑な問題は出ません。出題傾向としては、広く浅く、といったところでしょうか。

私は 編入数学徹底研究 という本を使って勉強しました。

高専生向けの本ですので,理論よりも解くことに重点をおいて書かれており,非常に実践的な内容です.研究室の同期はマセマシリーズを使っている人が多いのですが,編入数学徹底研究はマセマよりも解答・解説が詳しいと思います.ざっと見たところ,マセマで扱っている内容は編入数学徹底研究でもある程度網羅できると思います.私は大学の編入試験のときに使用したのでこの本を持っていたのですが,NAIST を受ける人にもおすすめの一冊です.

小論文・面接

小論文に関するプレゼンテーションは 3 分という非常に短い時間で行わなければなりません。そのため、小論文に書いた内容からさらに要点を絞って説明できるように準備しました。

情報科学に関する口頭試問については、情報系学科に所属していたこともあり、対策しませんでした。

試験当日

受付で TOEIC のスコアシートのコピーを提出したあと、受験者控室に通されます。自分の試験開始時間を確認し、ひたすら待機しましょう。

数学の試験

4 つの問題が出題されるので、解く問題を 2 問選択します。10 分間の時間が与えられるので、問題を見て答案の方針を考えます。短いようで結構時間はあるので、簡単な問題なら最後まで解けると思います。重要なのは、解けそうな問題を素早く選んで、その問題に集中して解ききること。私は、4 つの問題すべてを解こうとして解ききれず、時間を無駄にしてしまいました。

下見のあとは、数学の試験室に移動します。試験室では、ホワイトボードを使いながら選んだ問題 2 つを 12 分で解きます。私は下見の段階で解ける確信がなく、とても焦ってしまったので、試験官にサポートされながらなんとか解答する形になりました。

解いた問題を以下にメモしておきます。完璧には記憶していないので細かい部分は実際に出題された問題と異なりますが、本質的には同じだと思います。

解析 (2016/7/7)

級数

\[\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{n^2 + 2}{n^4 + 3n + 1},\]

の収束と発散を判定せよ。ただし、ゼータ級数 \(\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1}{n^p}\) が \(p > 1\) で収束し、\(p \leq 1\) で発散することを用いてよい。

解答例:

\[\begin{align} \sum_{n = 1}^{\infty} \frac{n^2 + 2}{n^4 + 3n + 1} &= \sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1 + \frac{2}{n^2}}{n^2 + \frac{3}{n} + \frac{1}{n^2}} \\ &< \sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1 + \frac{2}{n^2}}{n^2} < \sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1 + 2}{n^2} < 3 \sum_{i=1}^{\infty} \frac{1}{n^2}. \end{align}\]

級数 \(\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{1}{n^2}\) は収束するため、級数 \(\sum_{n = 1}^{\infty} \frac{n^2 + 2}{n^4 + 3n + 1}\) は収束する。

代数 (2016/7/7)

\[A = \begin{pmatrix} \alpha \quad 1 \\ 0 \quad \alpha \end{pmatrix}\]
  1. 固有ベクトルを求めよ。
  2. \(A^n\) を求めよ。

解答例:

  1. \(\det (A - \lambda E) = 0\) を \(\lambda\) について解くと \((\alpha - \lambda)^2 = 0 \iff \lambda = \alpha\) (2 重解)。\(\lambda = \alpha\) のとき、\((A - \lambda E) \begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \end{pmatrix} \neq 0\) となる \(\begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \end{pmatrix}\), \(\begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \end{pmatrix}\) を取れば、それらは一次独立。したがって、固有ベクトルは \(\begin{pmatrix} x_1 \\ x_2 \end{pmatrix} = k_1 \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}\) \((k_1 \neq 0)\), \(\begin{pmatrix} y_1 \\ y_2 \end{pmatrix} = k_1 \begin{pmatrix} 0 \\ 1 \end{pmatrix} + k_2 \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}\) \((k_1, k_2 \neq 0)\)。
  2. \(P = \begin{pmatrix} x_1 & y_1 \\ x_2 & y_2 \end{pmatrix}\) とすれば、\(AP = P \begin{pmatrix} \alpha & 1 \\ 0 & \alpha \end{pmatrix}\) となる。ここで \(P\) は一次独立な列ベクトルから構成されるため、\(P^{-1}\) が存在して \(P^{-1} A P = \begin{pmatrix} \alpha & 1 \\ 0 & \alpha \end{pmatrix}\)。したがって、\(A^n = \begin{pmatrix} a^n & n \alpha^{n-1} \\ 0 & \alpha^n \end{pmatrix}\)。

面接

面接官は 3 人です。中央には志望した研究室の教授がいらっしゃいました。基本的には志望した研究室の教授の質問に答えます。

まずは小論文に関するプレゼンテーション。

  • 「3 分で小論のプレゼンよろしく」
  • 「併願?」
  • 「うちが第一志望?」
  • 「英語できる?」「TOEIC は何点?」
  • 「提案手法のメリットとデメリットを教えて」
  • 「研究テーマの魅力について語って」
  • 「プログラムは何行くらい書いたことある?」
  • 「趣味は?」
  • 「大学では何のサークルやってた?」
  • 「大学入ってから始めたの?」
  • 「他に何かアピールしたいこととかある?」

体感ではとても短かったです。

最後に

受かっていることを祈ります。

追記: 合格してました.